大友映画はよく分からん
- 2007.03.26 Monday
- 01:19
で,蟲師なんですが,僕はこのマンガをつい最近読んだのですけれども,とても面白い話だと思いました。第一に,この話の深さに興味を持ったのです。
1巻から8巻まで読んでもぜんぜん底が見えてこない話の深さ。しかも見えないのは蟲の住む世界を,この話の登場人物にも知っている人はいないから。となれば,次に何が出てくるのかは作者以外に知るわけがない。おまけに何かが出てきてもそれは現象や結果でしかなく,原因やましてや蟲の気持ちなどは誰にも分からないし,明かされもしない。
登場人物達はその現象だけに翻弄されながら世界を生きているわけです。つまり,話としては蟲によるなんらかの現象がおきている世界を生きている登場人物たちの話であり,僕はその無限に広がるかのような深いストーリーに興味を持ったのです。
ところが,今回の映画では,その深さを分からないものとしか表現していないように感じるのです。見ているほうは分からないだけで,それがホントに深いのか浅いのかすら判断できない気がします。
実際にその世界に暮らしている人なら世界の深さを肌で感じることができます。しかし,僕らは当然その異世界を知らないわけです。異次元の世界を映画の2時間で表現するのであれば,説明のセリフやナレーションが必要です。それが,その世界を見るにあたっての約束事になるわけで,それが分かっているのといないのとでは,見えるものが違ってきます。
大友監督の映画は与えられる約束事がいつも少ないのです。従って,見る側がそれを発見する必要があります。それを良しとして,何度も同じ映画を繰り返しみて,約束事を発見していく人もいれば,僕のように不快感を持ってしまって一度しか見ない人間もいると思います。まぁDVDが出たときにはもう一度見たいと思いますが,世界に共感できないまま終わってしまったことは,やっぱり少し残念です。
おまけに今回は主人公のギンコに話のスポットライトが強く当てられているので,世界の広さが失われてしまってる気もします。世界にはいろんな蟲がいて,いろんな現象が起きていて,それに弄ばれている人間がいて,ギンコはその話の案内役でしかないのです。特別な能力があるわけではなく,普通の人より少しだけ蟲に詳しいだけの人間であり,弄ばれていることに変わりは無いのです。なので,今回ギンコを少しだけ特別扱いしたような構成になってしまったことで,狭い世界になってしまった気がします。これも少し残念。
でも,見ていて嬉しかったのは風景が美しかったこと。特に画面上の陰と陽の使い分けはさすがの部分がありました。あとはやっぱりオダギリジョーと蒼井優ちゃんのお散歩場面が良かったです。ほのぼののんびりしてしまいました。
ここまで書いて,原作を読んでない人は一体この映画をどう受け止めるのか?少し気になりました。彼女とは,原作を読んでない人は分からないだろうと話していたのですけど,もしかしたら予備知識が無いほうが違うものが見えるのかもしれないと思ったりもします。
結局,おすすめも批判もしきれない部分があるので,自分の目で確かめてくださいとしか言えません。まぁ大抵の映画みんなそうなんですけどね。